2008年10月26日日曜日

混じり物は海中生物のウミセミ

 海藻や海草類(以下、便宜上「海藻類」とひとくくりにして言います)を我々列島人はよく食べます。昆布、わかめ、ひじき、海苔、もずくなどです。これらは干したり、塩漬けにしたり、漉(す)いたり、いろいろな加工をして保存して、更にまた加工して食べる食品です。この海藻類を食べることによって微妙なミネラルなどを摂取することができますし、なによりも食卓を豊かにしています。伝統的な食品です。実はこれは列島人には何程でもないことですが、大陸に住む人々はこれらのミネラル分の摂取に大変苦労していることなのです。

 さて、これら海藻類は海の中でその種類だけでそこに繁茂しているわけではありません。いろいろな生物と一緒に暮らしています。収穫のときにいろいろなものと一緒に水揚げされます。商品にとってはつまり混じりもの(「夾雑物」キョウザツブツと呼びます)です。棲息環境や採取方法によっては人工的なもの、つまり異物が混じる場合もあります。これらが非常に多く、海藻類の加工のひとつの重要な点はこの選別作業にかかります。原料の状態に近い場合はなかなか機械だけで選別排除できることではなく、人の作業による、目で見て行う作業=目視選別や、手で触れて行う作業=触手選別が重要な工程(異物除去選別工程)になります。大変緻密で根気のいる作業なのです。

 それが収穫される産地での作業(浜の加工)、原料が仕入れられて行われる加工屋さんでの作業、常日頃大変な苦労のすえに私たちの売り場を通して食卓にあがります。

 例えば「もずく」は沖縄のきれいな海で養殖に成功し増産が可能になり、今では日常の食卓にあがるようになりました。数多くの食品が輸入にたよっているなかで、国産100%で賄える食品のひとつです。その「もずく」も夾雑物や異物の選別が重要でかつ大変な作業なのです。

 それでも、やはり見逃すことがある事例で「ウミセミ」という生物を紹介します。海中生物のウミセミ(甲殻類のうみせみ科に属する動物でえびの仲間の一種)は「もずく」の養殖場付近の海域にともに棲息しており、工場の選別工程でもよく発見される混じり物のひとつです。万一食しても人体に害を及ぼすものではありませんが、商品としては排除すべき対象物です。画像のように目と目が離れてかわいらしい顔をしています。

 工場にて選別マニュアル(もずくをよくほぐしながらうすく広げ、目視と手の感触で除去する方法)に従い、丹念な除去作業をしていますが、これらの工程でごく稀に見落され製品化されることがあります。

 昔は浜のことも畑のことも食の生産の仕事が消費者には身近にあって、その苦労がわかっていて、また自然のものですから、「取ればすむこと、お互い様」だったと考えますが、残念ながら今の社会に「生産の現場」への想像力がありません。「消費者」が「王様」になってしまいました。わたしは想像力が欠如していく社会を悲しく思っています。もちろん、入っていていいという訳でもなく、また更にこのことと消費者主権の確立とは別次元のことです。決してモノを粗末にしない、モノをつくるひとびとのことを足蹴(あしげ)にしないというのが私の言いたいことで信条です、当然のことだと考えています。
 さて、「もずく」製品は個食用にカップに充填されたいろいろな味付けの「もずく酢」が普及していて、簡単便利、お手ごろな値段です。でもそれだけの利用方法ではなくて「塩もずく(塩抜きが必要です)」や「生もずく」が手に入ったら、ぜひ天ぷらやお味噌汁、卵焼き、海藻サラダに、ときには自分の好みの「もずく酢」を楽しんでほしいものです。単価的にも「塩もずく」や「生もずく」の方がお得です。

0 件のコメント: