2009年5月15日金曜日

開封

 得意先のI さんは部長になって来春定年を迎える。昨年あたりから本格的な自転車を始めて、週末は数十キロを走行しているらしい。ほかには定年を超えてフルマラソンできる人もいるし、挑んでいる人もいる。

 少年時代に逃したものは、社会に出ても封印してきた。

 私は少年時代、自転車によく乗った。そして聞いたことはあるが行ったことのない周辺の地名を訪れた。初めて買ってもらった少年用の自転車(24インチ)は盗まれたから、家にあったオンボロの女自転車(「ママチャリ」)を乗り回した。遠い土地でパンクして途方にくれたこともある。オートバイで通りがかった高校生のお兄さんに事情を聞かれ、親切なことに家まで乗せて行ってもらった。あとから自転車屋さんと一緒に取りに行った、そんなことでも昔の自転車屋さんはよく応じてくれたものだ。
 盗まれたものが数年後に還ってきて、新たに買ってくれとは言えなかった。当時は数万円した。
 足は短い。ドロップハンドルのスポーツ車などまず足がとどかないに決まっている。さまにもならず、変則ギアなど使いこなせないに違いない。しかし、カッコイイ自転車を駆ってさっそうと風をなびかせて行く姿を夢想したことはあった。あこがれた。

 近所のリサイクル店にこの連休からマウンティンバイク26インチ24,800円、ドロップハンドルのスポーツ車26インチ45,800円が置いてある。

 少年時代に逃したものを買うお金だけは持ってはいる。

 もし、この一週間売れていなかったら、私に買ってくれということだと、密かに考えている。

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