2008年9月28日日曜日

さんまを食べよん♪


 秋刀魚は北の魚です。その昔、沖縄の魚の仕入れの担当の大城さんは秋刀魚を見たことがありませんでした。「いわしか?」と言ったそうです。私も沖縄の魚は知りませんでしたからお互い様です。沖縄の赤い魚や青い魚を見て「金魚か?」と思ったものです。

 もともと、野菜の産直とか、優良な牛乳を飲む会などを母体に仲間を集めていってできたのが我社我がグループの有力な一員でした。40年近く前になります。そういえば、牛乳の水増しは我が国にもあったわけですが、まさかメラミンを添加するまでの悪質さはなかったので幸いでした。これはいくらなんでも禁じ手でした。

 当時、「商品開発」と称するものにも「常識」に挑戦するような提案をしたいという活力があったような気がします。例えば歯磨きからは発泡剤を抜いたとか、世に問う商品を出したものでした。卵、牛乳、米、野菜、肉、など基礎的な生鮮食品がなんとかなって、さて魚をどうしようとなったときに、ちょうど冷凍技術が普及してきたころで、私たちの供給する水産物は最初からほぼ冷凍品でした。

 関東では脂の乗った秋刀魚はポピュラーな魚だったと想像しますが、関東の沖を越した秋刀魚は急に脂が落ち、伊豆や和歌山で獲れる秋刀魚は丸干しという加工方法でおいしく食べられます。これらの地方では脂の乗ったサンマは好まれないというふうに価値観が変わります。

 名古屋あたりでは汐サンマで大量に流通しました、値段はかなり安くなければなりませんでした。西日本では生鮮ではあまり流通するものではなかったように考えられます。列島の果て鹿児島では珍しい魚で、沖縄では見たことのない魚でした。これが30年近く前までの話です。

 秋刀魚は小骨も内臓も少なく、丸ごと塩焼きでも食べやすくとてもおいしい魚です。ラウンドのまま凍結して供給するにはもっとも適した魚でした。ただ、これを水揚げ産地で一尾ずつ急速凍結をしてもらうという態勢ができていませんでした。産地である北海道や東北、関東の漁港では大量に水揚げされトラック単位で荷捌きされる仕組みで、手間隙のかかるこの作業を引き受けてくださる加工屋さんはなかなかいませんでした。漁期の後半から加工用の原料として凍結する仕組みと装置(急速に冷凍できる設備)はありましたが、当時は鮭もさばもいわしも大量に揚がりてんてこ舞いでしたから、相手にしていただける加工屋さんはいませんでした。

 冷凍さんまというのは加工用(サンマの開きなどにします)または餌用(延縄漁などに使います)のために、まとめて冷凍しますので、使用するときは解凍しなければなりませんでした。それで、魚を並べてもらうときにひと手間加えて、原料を解凍しなくとも凍結されたサンマが一尾ずつ離せる仕立て方を工夫してもらいました。迅速に多量のサンマを捌かねばならない水揚げ時にこれを引き受けてもらうのは加工屋さんにとっても難儀なことでしたが引き受けていただくことができました。そうして3尾パックとか4尾パックという製品をつくりました。事実上の産地1回凍結で鮮度を保ち、周年でなお且つ遠隔地でも供給できる商品をつくりました。今と違ってまだ水産流通が津々浦々まで及んでいなかったときに、冷凍サンマの製品は西日本、とくに九州、なかでも鹿児島ではよく売れたという印象的な経験がありました、今から四半世紀ぐらい前の話です。ちょうど共同購入という無店舗供給の発展と軌を一にしていました。

 日本近海を回遊するいわしやさばが激減した中で、秋刀魚は今でも恵まれた資源のひとつです。漁師さんの苦労のお陰で、それも採算に合っていないように思われますが、ふんだんに食べられて安い魚です。お米が取れるときに、出回る青魚です。流通技術が特段によくなりましたから鮮度のよいものは刺身でも食べられます、昔は産地でしか食べられませんでした。

 さんまをおいしく食べましょう、この日本の海の恵まれた資源のひとつです。「魚種交替」という現象があって、今はたくさん獲れる魚でも急に獲れなくなることがあります。何十年または数百年の単位で起きることのようですが、いわしがそのひとつで、ついこの間まで400万トンぐらい獲れていたのがパッタリいなくなりました。現在の日本人が経験したことです。

 *ブログ『お野菜を食べよん! http://oyasai-tabeyon.no-blog.jp/ 』で「秋刀魚の味噌煮♪」が紹介されていました。
 *画像は我家の手作り‘女川お取り寄せのさんまの開き’と‘大分のたこの一夜干し’の夕食

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

おはようございます♪
リンクしてくださりありがとうございます♪
何気なく購入しているサンマですが、やっぱり歴史があるんですね・・・
魚柄さんの「冷蔵庫で・・・」も食の歴史についてでした。
とてもおもしろかったです。
なんでもすぐに手に入る現代ですが、その背景にはたくさんの人の関わりや、時代の流れに応じた努力や、またそれとは全く関係なく変わらざる得なかったことなどが沢山あるんですね。
いわしは子育て中の我が家にとっては必需品で、手開きしてはいろいろと料理しました~
ほんと最近は手に入らなくなりましたね・・・

匿名 さんのコメント...

今回はとても参考になりました。そうか、秋刀魚も積み重ねがあるんですね。