2009年7月12日日曜日

こけし独楽


 聞いていたように降り立ったら硫黄の匂いがした。チェックインには時間があったので、荷物をホテルに預け、街を少し見物した。小さいときはもっとずっと賑やかだったと妻殿は言う。どこか閑散とした感じがある。どこの地方の町も同じだが、かろうじてシャッター通りではない。どこかの旅行社の温泉番付表が街中に貼ってあって、東日本の“横綱”とランク付けしてある。私は初めて訪れたが温泉はさすがだと思った。源蔵の湯に逗留し、その近くの共同浴場の滝の湯にも感心した。たまたま、ひとがいなくて独り占めできたせいもあるが、湯量と泉質と清潔感にいい湯にめぐりあった気がした。

 お店に誰もいなかったから、ちょっと入ってみた。頭部を胴の部分にはめこんでつくる鳴子のこけしの技法は一流なんだと妻殿は言う。

 お店の座敷にいたらしい店主と思しき中年男性が出てきて応対する。私たちの目線の先にあるこけしの上に載った小さなコマをまわしてみせる。このコマは落っこちないんだといいながら、やってみせれば実は落っこちるのがある。あれっ、と言って取り替える。ほかのものは落ちないで廻り終わればピタリと止まり、一、二、三、四のどれかをさす。ルーレットみたいなもので優れものだ。「当り独楽」というらしい。独楽の芯ははめるところもあるが、うちはひとつの木から削って作るという。あなたが作者かと訊いたら、作者(職人)だという。作業場は店頭にあったがお昼で店の座敷にひっこんでいたらしい。

 そんな話も聞けて、簡易ルーレットで遊べそうなので珍しく妻殿も買うことに同意する。 私はあちこちで旅の思い出にといっては民芸品を買い求めるので30年も経つと飾るところもないぐらいに溜まる。それで「旅の思い出」の購入癖をできるだけ抑制されてきた。

 岡崎靖男さんといって、こけし職人で親の代から引き継いだそうだ。鳴子には昔は80人ぐらいいたそうだが今では40人ぐらいだとのこと。 福島に音頭を取る人がいて、毎年、創作こけしのテーマと規格を決めて、各々の作者がそれに沿って制作し、競い合い限定販売をするらしい。独楽を包装したあともそんな話をひとなつっこくしていただいた。

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