2009年4月25日土曜日

Aさん

しめさばに骨があると、さすがに商品として具合が悪い。

それでAさんの故郷の加工屋さんのところへ乗り込んだのが、もう四半世紀も昔の話。

世はまさにバブル。当時の一部の魚の加工屋さんの社長室はディーラールームになっていた。

3K、魚の加工の現場にくる若い人はいなかった。
元気が良くて手捌きも見事なのだが、なにぶん現場に従事するご婦人たちは高齢だった。しめさばの場合、いちいち、たて骨をピンセットでとるのだが、さすがに若い人でなければ視力に無理があった。

まもなく、しめさば加工は首都圏近辺ではできなくなり九州や八戸など地方へ求めた。

魚に骨があって大変なお怒りをちょうだいする時代がきた。
わからないでもないが、わからない。
この列島の人々は魚を食べなくなる。そして食べられなくなるなと考えていたら、その通りになった。

Aさんたちが若いときに理想に燃えて起こした会社を、ついにたたんだ。Aさんはシャイな人だからそのことが恥ずかしいと思っているのかも知れない。もう連絡がとれない。

突然のAさんからの連絡;「長年、公私にわたりお世話になりまして、本当にありがとうございました。」

間に合わなかった私の返信;「私だけでなくみんな心配しておりました。大変ご苦労なさったことと拝察します。で、こういうのもなんですが、今日、破産は日常茶飯事。それよりも、まだお若い、これからどうなさるのですか?人生の折り返し。私も人生を変える準備をしています。これからおもしろくしましょう。別れのあいさつはおもしろくありません。 ね。」

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