2008年12月10日水曜日

盲腸の


 人生で初めて手術を受けた日だ。父親が亡くなったその年の今日がその日。
 親戚の「おてい」おばさんの息子さんで、産婦人科を開業していた人を母が呼んできて診てもらったことを覚えている。今で言うセカンドオピニオンということだったのだろう、さっさと切ってしまった方がいいという診立てで、それで母は私の入院を決心したような気がする。手術後、看護婦さんから「おならも出てよかったね」と言われたが、しばらくして足がしびれるようなガラスの破片で切られているような感覚が襲ってきた。医師に訴えたら麻酔が切れていく現象だったらしい。母は忙しくてなかなかやって来ない。個室部屋の電灯も点けられず、ひとり心細かった。あのころの12月は文字通りの師走だった。
 回復していくときの食事の内容が日に日に変わっていき最後のころのカツ丼はうまかった。女の子も含むクラスメイトが見舞いに来てくれてはずかしかった。喪中だったので年賀状は出せなかった。遠い昔の記憶が蘇る。

 「おてい」おばさんは父親の実姉であることが後年判明した、その息子は当然ながら従兄弟だ。このお医者さんは数年後に癌で若くして亡くなった、「おてい」おばさん夫婦はさぞかしがっかりしたことだったろうに。ひげの濃いひとだったようにかすかに覚えている。

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