2008年8月17日日曜日

梅干ひとつ


 幼いとき、梅干はすっぱくて、しょっぱくてそう簡単に食えるものではなかったし、まして味わいなどわからなかった。お腹が痛いというと母は梅酢を摂らせた。口に含めばほぼ拷問のようだった。そうして、「おにぎりは梅干」などをとおして、梅干の味を自然にわかるようになった。それがちょうど韓国におけるキムチのようなものにも思える。我々にはこんなに辛いと思えるものを生まれたときから食えるのかと韓国人に訊いたら、梅干と同じように、幼いとき辛いものは辛いと感じていたという、徐々に慣れさせてきたのだそうだ。

 汗だくになるらしく塩を吹いて、襟足は真っ黒になって帰ってくる。配達を終えたあとは営業で遅く帰る。曜日によってはお昼をとる暇も惜しいというから、自分で大きなおにぎりを2個作って持っていく。この息子は梅干がきらいだったが、おにぎりの具は結局これにつきる。食べたあとの梅干の種をみて、種までしゃぶりつくものだとまた教える。

 まねごとで梅干を漬けたが、私自身は血圧が高めに出たりして食べるのを控えたら、繰り越すようになったので今年はパスした。息子が使い始めたらやがて底をついた。

 お店で買い求めたが、まともなものが売っていない。梅干ひとつとっても食の変化を捉えられる。「はちみつ梅干」が世に出て久しい、邪道だと思っていたらいつのまにか主流になった。中国産がでてきて安いものになった。国産、無着色、塩のみを探したが、「塩のみ」が無く、味はつくってあった。

 我々が「まとも」と思っているものが、隅に追いやられている。後輩たちが仕入れたり、企画したりする加工食品や冷凍食品は私にはだんだんわけがわからなくなってきている。

 個配システムで買い求めた「曽我の十郎」を奄美からいただいた「与論の塩」で漬けた。金持ち趣味で素材がよければいいというものではなく、漬け方が難しい。
 
 工場でつくった「いろいろな調味料でつくられた味」の梅干よりも、農村加工でつくった素朴な梅干のほうが、そもそも「無添加がどうのこうのというこだわり」以前に、私は旨いと思っている。群馬の山村に行く機会があってみつけた、しかも「加工品梅干」より安かった。個配システムでも偶然企画があって注文した。箱根の麓の梅干の云われを聞き、この産地は訪れたこともあって、馴染みになった。また、ここの代表の人と一緒に紀州田辺や南部にも勉強しにいったこともあって、不器用な自分でもつくってみたくなった。

 加工食品に囲まれていても、らっきょうも梅干も白菜もぬか漬けも母親たちがつくっていた記憶があって、結局たどりつく。それがホンモノという、擦り込まれたようなものがある。今、ハッシュドポテトやナゲット、結着肉のどうのこうのという商品の苦情と付き合っている。やがてこれが「ホンモノ」「ノスタルジア」というときがやってくるかと思えば複雑だ。

 なにをどう伝えるのか、難しいかもしれないが、「ごはんに梅干」は、へたなスポーツ飲料よりはバテの防止、疲労回復に役立つ、先人の知恵、クエン酸のチカラだ。

 *梅酢だこと海草の和え物(「梅酢たこ」は加工食品だが、梅酢の酢タコが一番相性がいいということを経験則的に知っている、不思議なことに我社グループ以外ではあまり売れない、知られていない実力商品)

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

曽我の十郎梅

これは、種が小さく、皮が薄い。
だから、果肉が熱いが流通でクレームが多くなりやすい。そのためあまり出回らなかった。

スポットライトを当てたのが、NPO小田原食とみどり。これを、地域ブランドとしてパルシステムで売り出した。今は、人気商品。

小田原は、旧東海道の宿場町。これから難関の箱根超えをする。この道中に梅干は不可欠。おにぎりの腐敗防止、疲れが取れる。
梅干のチカラで夏バテは吹っ飛ぶ。

匿名 さんのコメント...

幸実は過分なお言葉、赤面の到りです。ありがとうございました。猛烈に照れております。

本日は貴ブログのテーマをいただいて梅干しから、味覚のことを書こうと思っております。

増田・大仏・レア さんのコメント...

梅干婆という尊称を忘れているでしょ。ぶんぶんこは二月に悩みまくっていた。

匿名 さんのコメント...

私の本名と名をアップしました。ま、こんな顔をしちょります。