2008年6月20日金曜日

農協、漁協、加工業、切干ともずく

 故郷に帰ったり、仕事で訪れる機会があったりして、農村の風景が変わっているのに気付いていました。とくに地方です。農業とは縁がなかったのですが。廃屋と耕作放棄地。
 南の○○富士と呼ばれる裾野は大昔、春になれば一面の菜の花畑でした。それはそれは見事なものでした。油をとることが成り立っていたのだと思います。数年後には一面の大根畑になっていました。特産の壷漬けが成り立っていたのだと思います。今は幾重にも整備された道路とお花畑、テーマパークの点在する風景になっています。田舎の香水=堆肥の匂いもなければハエもとんでいません。生産と生活の気配が薄いのです、思い違いかもしれません。
 同じようにこの列島の海と漁港も悲しく変貌していました。

 さて、もう10年近く前になりましょうか当時安い中国産におされて瀕死の状態にあった切り干し大根を気難しい得意先に売り込むために産地に勉強に行きました。仕入先は系統でしたので産地、生産者は確実であるだろうけれど検証も兼ねていました。昨今の事件だけではなくて、かなり以前から「偽装」というのがあるということは肌で感じていました。耳をすましていれば、また統計などをつぶさにみていれば感じることです。市中に出回るおおよその量と生産量が矛盾していました。ですから現場主義を信条としていました。本音を聞きだすのです。裏をとるのです。裏もとらぬコロッケなんて信じられません。
冬の田んぼに棚が組み立てられて斜めに立て置かれた網に大根のスライスが並べられます。「霧島おろし」と呼ばれる乾燥した寒風と燦燦とした短い冬の日差しで仕上げられます。切干は工場で作るものと違って、わかりやすく且つ壮観です。
 ただ素朴な農村加工品で混じり物や異物が混入することがあります。荷を受けて商品にする系統の加工場は本来このことについて生産者と解決の対話と実践を重ねていてほしかったのですが農協の事務という組織の限界を感じます。当然これまでも努力は積み重ねられてきたことなのですが。
 個々には頑張っていらっしゃるのですが、いかんせん全体を鳥瞰し長い目で解決をはかるということができていないという観があります。異動もある農協の上部組織のサラリーマンという観は否めません。他人事ではありません、似たような体質をもっていますから。

 自然の生産物で素朴な加工品は実は海藻なんかもそうで、同じ苦労をしています。そういう点では商系の加工屋さんによい実践例、ヒントを学ぶ機会がありました。条件は違うわけですが、その加工屋さんが教えてくれました。必ず失敗例も成功例も産地にフィードバックする。産地も誰がつくったかあきらかにすることを組み立てる。そういう意味ではずっと以前からトレサビリティーの仕組みが自ずとできていました。個々の責任も明らかにしつつ協同で水準を引き上げていく、漁協の漁協たる本懐です。加工も隠さず公開する。互いに交流する。売買の関係から、相互の自立(たぶんに産地、生産者のことですが)を前提にした関係をつくりあげていく。加工屋さんも自立を促していく。それは私達、卸小売にとっても理にかなった方法だと気付いた次第です。意欲があがる、品質があがる、事故が減らせる、安定して供給を受けられる、関係がつくれます。なによりも信頼が築けます。そうしてこそ「顔が見えてくる」のでしょう。
 商店ですので金銭にはシビアです。歩留まりも仕入れ価格にも緊張感があります。ただし、価値を生み出せば産地にたいして無理な仕入れをしなくてよいのです。この良い方の循環、先に進んだ価値、これが本当の競争力だと同感するようになりました。安売り一辺倒で得をするものはおりません。この商店の幹部は30年来の知り合いですが、ついこの間 年が一緒だとわかりました。私は今でも堂々の平(ひら)ですが彼は最初から幹部でした。ようやく「安く買うぞ」「高く売るぞ」という立場を超えられたのかなと思うのです。互いに苦笑いをするのですが。
 なんとも凄いのが生産者を束ねるその漁協なのです。協同組合らしさ、たくましさ、楽観未来志向型、積み重ねてきた実践。あの、戦跡と米軍基地とリゾートの混在する沖縄にあって、県の産業のひとつ、この列島の数少なくなった水産資源を形成(全体で生産量2万トンです)し、同時に人類の財産である環境を守る実践。語ることは付きません。いつかお話しましょう。ねぇ、鴇さま。お百姓さま。Oさん。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

この話好きです。
余情半さんの小規模商工業者に寄せる愛情を感じます。

フードシステムとよくトキ氏が言いますが、言い方はイヤですが、分かります。産地からの立ち上げた、まっとうな食のシステムです。こんな「混じり物や異物が混入する」ものがまっとうなのです。

これを説明できる範囲があります。地場と地場です。まだ構想段階ですが、私もそこに戻るべきだと思っています。単に復古するのではなく、全国産直のノウハウをもった回帰です。

野生のトキ さんのコメント...

余情半さん
こういう各地の生産現場をこれほど知っている人もめずらしい。

かつ、すきなのですね。
こういう話は、いっぺんに全部書きまくらず、もったいないからシリーズで書いてください。

楽しみにしています。

匿名 さんのコメント...

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