2008年11月19日水曜日

「さら戦」映画祭鑑賞記Ⅳ


「さらば戦争!映画祭」は有志による自主上映企画だ。

NHKドラマ「帽子」が私にとっては緒方拳(「こぶし」というのがホントウ読み方のだそうです)さんの遺作になった。そのドラマと同様趣旨で“戦争と今”が映画『早咲きの花』(06年)の設定だったように感じた。こちらは浅丘ルリ子さんを起用していた。

上映のあとこの映画の監督菅原浩志さんのトークショーだった。
8・6ヒロシマと8・ナガサキの間に、実は8月7日の愛知県の豊川で大空襲があったそうだ。当時豊川には東洋で最大級の海軍工廠(海軍の兵器工場のこと)があった。たった25分余の空襲で3,000人近くの人が死亡、その数倍の負傷者が出たと考えられる。軍需施設(工場)であったため、この事実は徹底的に秘匿されたそうだ。そのため、あまり知られていない。その犠牲者の中には多くの学徒動員勤労奉仕の生徒たちがいた。今でいえば中学生ぐらいの子ども達だ。短時間の3,000人の死者は「史上最大の悲劇9・11」に匹敵する。
戦争の夏をテーマにした映画は夏に撮影する、灼熱の豊橋で進行されたらしい。女優の浅丘ルリ子さんは夏の撮影を毅然と演じきったプロであったと紹介された。

舞台は戦争中の愛知県豊橋の国民学校と現代。戦時中のシーンでは地元の子どもたちをオーディションで使った。太っていないこと、三河弁が使えること、そして男児は坊主、女児は刈り上げのおかっぱになれること。早くいえば「かつお」と「わかめ」ちゃんをわんさかつくった。この子たちが出演者。食べるものがない、着たきり、青っ洟(ぱな)をたらす(栄養失調のせい)、を再現した。昔の子どもたちになれたという。環境に適合できるもの。ただ坊主にしてみたら円形脱毛症の「現代」の子がたくさんいたらしい。最初は隊列を組んで歩く、右向け右ができなかったらしい。そんな撮影裏話を聞くことができた。

会場にいたプロデューサーの佐久間さんが紹介された。映画の裏方は男の世界でスクリプターを長くされていたご婦人。「感覚だけが刺激される映画ではなく、心にしみわたるようような映画を作りたかった」とごあいさつ。

最後に監督は、つくる人と観る人のほかに、今は映画を伝える人が必要だ、―――この(さらば戦争、映画祭の)実行委員会はすばらしい!と。

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