2011年7月30日土曜日

つらさ

 イカ釣り船がそろそろ入って来るから来週は家に居るかという邦雄さんからの今日の電話だった。

 社交辞令的な話がひと段落して、やはり本音は参っているという話だった。

 「風評被害」と邦雄さんは表現するが、要は放射能被害だ。かつおも来るし定置網もあがるという、それが宮城県というだけで“風評被害”にあっていて不安だという。「牛一頭の話で」と今の農民が蒙っている事態を表現して、自らにも降りかかる魚の不安の話を邦雄さんは話し出すが、ほとんど悲鳴にも似た話だ。仕事が成り立たないという。私にはこの事態は3月のあの福島原発の事故の時点から予測しえたことだ、それで6月の末に会ったときこのことを言おうと思っていたが、面と向かっては言いそびれた。その時は、遠からず直面しうることの覚悟を助言しようと考えていた。言えることは心構えにしか過ぎないけれども。最悪、当地では水産加工業が成り立たない可能性さえも考えられる。が、あの地震と大津波の震災を生き残り、水産女川の再興に寄与しようとしている邦雄さんには言えなかった。当時も今も言えるのは、少なくとも残留放射検査を厳密にやることの忠告しかできない。しかし、あのとき、言えなかったことを邦雄さんの方から切り出してきたので、ありのままに思うことを話した。気休めでも話して、気分よく電話に応じればよかったものの、邦雄さんの不安に輪をかけてしまった結末になった。よく考えてみれば、彼は経営者だ、人の雇用にもかかわる立場にある。なんの解決策の助言にもならず、悪いことを言ってしまったような気がした。

 最後にそれで、「送ってもいいか」と言うので、何をいっているのだ、ありがたいことでもちろん楽しみにしていると答えた。

 農業者のことも漁業者のことも、さまざまにやりきれない話がとびかっている。

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