2009年2月20日金曜日

「いせえび荘」

 関東では2月になって雨が降っていなかった、雨が降ってよかった。「晴耕雨読」という名の芋焼酎があって「いせえび荘」という旅館に好んで置いてある。場所は薩摩半島の南の端っこ。

 ここで獲れる伊勢海老を様々な料理でもてなしてくれるその名の通りの宿である。まわりに温泉はいくらでもあるがここは温泉宿ではない。1泊2食で18,900円程したので高いと躊躇したが、料理はそれ以上の価値がある。伊勢海老づくし、もう参りましたというほど印象がある。

 地名は「番所が鼻」という。前もってペリーは日本をよくリサーチしてきたので、首府に近い伊豆下田に艦隊を率いて現れた。その当時の西欧列強の帝国主義的進出を薩摩は既に意識していたので、ここの見張所(=番所)の役割を重視した。そういう由来のある本州の南端のそのまた先っちょ(=鼻)である。
 そしてここは絶景地。全国を測量して歩いたあの伊能忠敬をしてうならせた場所として伝えられる。何が絶景か。海に聳える立錐型の開聞岳を東に仰ぎ見る。特攻隊の若者が翼を振ってあとにした薩摩富士。南に面しては太平洋とも東シナ海ともつかぬ大海原に臨める。琉球・奄美からの船も見えたであろうか。四国から甑島へ回遊する元気者の鯨の家族の潮吹きも見えたかもしれない。

 遠方から訪ねて来る泊り客、地元の宴会・法事などできりもりしているらしい。当主が一代で築き、息子さんがフロントに立つ。なかなかのイケメンである。地元では知られているが、さほど有名な観光地ではない。とっておきの「いせえび荘」。たまの贅沢で伊豆かどこかの高い旅館に行ってへたな散財をするよりもはるかに価値があると贔屓している。

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