2009年10月28日水曜日

初版本


 前の日は冷たい雨が降った。北風が吹いた。レインコートは出したが夏のスーツをまだ着ていた。翌朝になれば、元気そうな日が昇る。澄んだ青空だ。くっきりと、こんなに大きかったかなという富士山が見える。この御山は武蔵野からは見る場所によって大きさが違うからいつも不思議だ。打って変わった好天だ、訪れる人の足元を心配していたようだが、行いのいい人は天候にも恵まれるらしい。冬服をひっぱりだして着たら日中は暑かった。橋本に向かうときはもう日が暮れた。そういえば京王線で向かうのは初めてだ。路線図の見えるところに立つ。みなさんと改札で待ち合わせて会場のお蕎麦屋さんへ駆けつけた。

 増田レアさんが『きなり歳時記2007~2008』(09年10月刊)という初版本を出す、朗読会をする。朗読会は三回目だそうだ。会場になったお蕎麦屋さんを任されている斉藤勝男さんには、店づくりとして何でも手作りのこういう催しを行いたいという願いがあったそうだ。会場はそういうようないくつかコンセプトをめざすお店でもあるらしい。

 「きなり」はとっていなかったので「歳時記」は結局初めて目にする。マハラバ文庫を少し覗いていたので文体はそれで多少なじみがある。毎週「きなり」に発表されたのとは違う趣きで目を追うことになる、それを装丁とモノカラーの各イラスト、四季の色彩の配置で奥行きも創りあげているらしい。こだわり、工夫があると。商品カタログ媒体の表紙から一冊の独立した味わいのある本になった。五編と一冊のお気に入りの絵本の朗読、西谷さんのオカリナ演奏を織り成して約1時間を過ごした。そして食事会。

 帰り着けば半月がくっきりとやけに大きく見える夜空。

*「きなり」とは首都圏を中心に展開する“パルシステム”という生協のライフステージ別の商品カタログのひとつ。子育て終了後のライフステージの人を主に対象にしている。

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