2010年11月21日日曜日

賛歌


 本州一寒いところと聞いていたので、季節柄どれほどかと着込んで行ったが、好天で拍子抜けするほど穏やかな日和に恵まれた。

 私のような九州育ちには東北の人の話はもごもごとこもるように聞こえる。まして、小さな声であればなおさらよく聞き取れない。しまった、カメラを忘れた。

 しかしながら、いやぁ、いい話を聞いた。ずいぶん以前に案内をいただいていたので何のテーマだったか忘れていた。「山仕事賛歌」という発表会。

 九州でも2番目に大きい川の下流域に育ったので、音を立てて流れるような上流域の山間部、中山間部の暮らしを経験的に知らない。

 農業や山仕事を楽しくやっていきたいとの来賓あいさつに続いて、茨城県北部奥久慈から来られた「山方漆ソサエティ」の神長さん(1月に訪問して私もお会いしていた)、福島県西部の奥会津から来られた菅家(かんけ)さんの「三島町生活工芸運動のあゆみ」と題したお話、岩手県北部軽米町から来られた兼田さんの「山仕事を中心とした地域おこし(木炭)」と題したお話が続いた。みなさん人前で話すのは初めてとかおっしゃっていたが、内容は濃いもの。3地域とも7割から8割は森林という山間地そして高齢者がほとんど。そこで、それぞれ、「漆の里」づくり・地域づくり(地域の宝の再発見、交流)、昔から伝わってきた山からの資源を使っての生活工芸品づくり・楽しみながら生活のための道具を自由につくり地元に人を呼ぶ高齢者による地域活性化、硬くて火力があって火持ちのいい炭という軽米の木炭の需要の掘り起こしや普及をして里山を守っていこうという「軽米町白煙会」の活動などをうかがった。
 最後に主催地の「藪川開拓の歴史と今」と題しての佐藤さんの、戦後の開拓入植からのお話をうかがった。岩手県藪川というところは盛岡から車で1時間ほど行った中山間地である。三澤さんは藪川で20年になるそうだ。「イーハトーブ農場」を経営している。その三澤さんから佐藤さんの話に先立ち、入植して、こどもをつくり、教育をして、この村をつくり今日に至った佐藤さんの話を後世に伝えようと考えたという趣旨のことを紹介された。

 「日本の中山間地の地域の価値を高めて行くには、今どのような、技が残り、地域・人としての活動がされているのか」お願いしたと資料の「はじめに」にある。帰りの車の中で、あれは増田さんの人柄だよね、こんなところまで皆さん話にきてくれたの、と三澤さんが言う。みんなそうだよねと納得。私も二日と車の酔いに沈み込んでうなずくだけだったけども。

 菅家さんが紹介した「三島町生活工芸憲章」。
一 家族や隣人が車座を組んで
二 身近な材料を用い
三 祖父の代から伝わる技術を生かして
四 生活の用から生まれる
五 いつわりのない本当のもの
六 みんなの生活の中で使えるものを
七 生きる喜びの表現として
八 真心こめてつくる
九 それを生活の中で活用し
十 みずからの手で生活空間を構成する

 大切な人のためにつくったモノのことだ。
 実際にマタタビザル、ヤマブドウ細工、ヒロロ細工を見せてもらった。マタタビって、ヤマブドウって、ヒロロって、そして山のことについてもっと詳しく夕食会が終わったあとも私たちの部屋でお話されたそうだが、うかつにも先に布団も敷かずに私は寝てしまっていたらしい…。

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