2010年3月8日月曜日

翼があっても


集金に来られたご婦人からこの木大きくなったわねと言われた。鳥がね、実を食べていたのよ。仰げば百日紅(さるすべり)の木だ。大きくなったかどうかの実感はない。枝を切るのに四苦八苦している。実といっても、全部落葉したてっぺんの細い枝の先にあるのかな。実が残っていることも知らなかった。

もとをただせばここら一帯はすべて雑木林で昭和30年代に開発された住宅地なのだろうが、それにしてもご近所の林や木がどんどんなくなっていく。こうも木が切り倒され、林が薙ぎ倒されては鳥も行き場がない。食べるものすら口にできない、住みかも失っている。それで貧弱な我が家の実すら食べにきているらしい。

少年のころ川辺にあったので、空を眺めていればトンビがくるりと輪を描いているのはごく普通だった。カラスだけが異様に多い。トキやコウノトリに限らず、日本の空から鳥がかなり減少しているのではないか。

自分が鳥であったらどうだったんだろうと考える。普通の鳥とてもいつ猛禽に襲われるかわからない。鷹やトンビだとしても、地上に餌になる小動物もいないとわかれば、空中を舞っていてどれほど絶望的になることだろう。

少年のころ「鳥であったら、翼があったら」と普通に夢想していたころとは様変わりしているなと考える。見上げる風景が異様だと感じている。

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