北風に向かって進む。光は春だ。
生まれたとき、祖父母はとうにいなかった。
祖父だけが鴨居の額縁のなかにいた。
母方の祖父が逝った。
父が亡くなった。
いつか病室で寝ていた私の手を、仕事を終えてきた兄はぎゅっと握り締めた。 がんばれと。
母方の祖母とお別れをした。
出遭いがあって一緒になり、四人の子どもに恵まれた。
小さなこたつを囲んで六人で肩をたたき合った、ろくにん、ろくにん、と。
みなが出て行った。
たらちねの母を看取った。
やがて孫が生まれるだろう。
兄姉たちも孫がいて、それはおめでとうと言われた。
鎖のように命がつながっている。
いつの日か、私の鎖も朽ち果てる。
寝顔を覗く。
何かにそっと話しかける。
明け方の夜をぎゅっと抱きしめる。
2010年2月6日土曜日
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