2010年12月7日火曜日

フィリピンと日本を結ぶビデオメッセージ


 自嘲するとき、後悔するとき、人間笑ってはいけないのに(ひきつるような)笑みが浮かぶことがある。「一度殺しあってみなさいよ。撃った弾がどうなるか知らない。…。人を殺すことができるんだよ。戦争は毎日人が死ぬということ。一日でも延びたら人が死ぬ。」フィリピンにいた元日本軍兵士。それぞれもう高齢だ。80代後半より上。もっといろいろな証言があった。NHKでもなんでもない。

 私たちの親は戦争体験世代。例えばつれあいの父親は1939年12月入隊。中国北部および現在のベトナムに連れて行かれそこで終戦を迎える。日中戦争および太平洋戦争を兵士として現役で体験し生き残った。戦後、「戦友会」には最後まで出ていた。兵隊としての体験談は断片的には家族も聞いている。苦労話や失敗談として何回も聞いている。しかし、娘であるつれあいはもっとどんなことを体験したのか言えないようなことも聞きたいと思っている。しかし、そういって訊いたことはないし聞けないようだ。それで、婿の私に訊けという、いちど訊ねたことはあるが、ひととおりのことで心の奥襞までは聞けるものではない。

 若い実行委員のひとたちが一所懸命になってやっている「さらば戦争!映画祭」は今年で6年続けている。前の方に席をとったので、後ろを振り向き、席の埋まり具合を見回すのだが芳しくない。とくに若い人の参加が少ないようだ。それでも、若い人を見つけたと思っていたら、後で登壇してきたNPO「Bridge For Peace」代表の神直子さんだった。1978年生まれだそうだ。私たちの長男と同じ年だ、つまり子の世代。「さらば戦争!映画祭 2010」に『Bridge For Peace~フィリピンと日本を結ぶビデオメッセージ』 (2009/日本/33分)を提供し、この映像を紹介するためのトークに出席した。彼女たちは戦争体験者の孫世代にあたる。そして、世代によっての戦争のとらえ方があるという。
 
 私たち子の世代は「だったら何故戦争をとめられなかったのか」と言わんばかりに責めるらしい。そう言われればそういう気分感情がある。とくに若いとき戦争話を聞かされたときにそう反発した経験があると思う。神さんたち孫世代は客観的に――とそういう視点になってくるという。「じいちゃん」とうちとけた我が子の小さいときの義父とのやりとりを想い出す。

 代表の神直子さんはNPO法人「Bridge For Peace」(略称BFP)の活動の目的をそのパンフレットの中で次のように述べている
 『2000年、大学生のとき訪れたフィリピンで、未だ戦争の傷が癒されない人々の苦しみをぶつけられました。夫を亡くした未亡人は、「日本人なんか見たくなかったのに何であんたはフィリピンに来たんだい!」と泣きじゃくりました。2003年、帰国した日本で、自分が関った残虐行為を、亡くなる直前まで老人ホームでうわごとのように嘆き続けた方もいたと知人から聞きました。
ぶつけるところのない怒りが未だに渦巻いているフィリピンへ、元兵士の想いをビデオメッセージとして届けたい、いつしか私はそう思うようになっていました。ビデオ撮影のために元日本兵の方々に過去の体験を語って頂く中で、私たちは多くを学ぶことができます。
フィリピンと日本をむすぶビデオメッセージが少しでも人々の心をなぐさめ、平和が広がっていくことを願って活動しています。』

 歴史認識で常に声が聞こえてくるのは韓国・朝鮮と中国からだ。なおかつ、ひどいことをしたという事例は幾つも聞いたことがあるが、たしかにフィリピンのことは抜けている。考えてみると、大岡昇平などの小説を通じて、また「ロラ・マシーン」など従軍慰安婦の問題などで知らぬでもないが、よくは知らない。
 そこが、神直子さんの言うところだ「フィリピンで戦争中 何があったか」
 フィリピンの人は声高には叫ばない――「国民性」もあるという。「戦争なんか終わったこと、いいよ」と。 ところが、上映会のあと、どんなひどい目にあったかとワッとと出てくるという。ただ、もっとひどい目にあった人は(日本人のいるところには)出てこないとも。

 戦争体験を残す活動(取材)を精力的に進めていきたいという抱負を語られていた。それにしても、やはり取材は大変なご苦労があるようだ。取材の対象者は人づてに聞いたり名簿(戦友会の?)を辿ったりして探し当て、手紙を書いたり電話を掛けたりして連絡をとるらしい。訪ねあてていっても家族の反対にあったり、やはり話せなかったりすることもあるらしい。会話を終えて元兵士の老人がつぶやく「僕はまだ生きていていいのかな…」。

・今後、新しいプロジェクトを立ち上げていくらしい。中国、韓国、インドネシアなどと日本を結ぶ。戦争や社会を様々な側面から見るための勉強会(「寺子屋BFP」)や他国の歴史教科書から学ぶ「教科書プロジェクト」
・地域で元日本兵やフィリピンの方々のビデオメッセージの上映会を開催していく。
・カンパなど支援をしてほしい。
・パンフレットの配布をして、活動を広める手伝いをしてほしい。

 ~そんなメッセージが(パンフとともに)伝わりました。

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