2010年6月16日水曜日

フリーハンド


 からだが重い。体調のことではない。
 カメラに携帯電話、万歩計、財布に定期、手帳が2冊、ペンが3本、おせんにキャラメル。ハンカチ・ポケットティッシュは当然だが、以上のようなものを携帯している。
 「シンプル イズ ビューティフル」妻殿の信条だ。その彼女とて「大きい葛篭(つづら)と小さい葛篭」のどちらがいいですかと訊かれれば、迷わず「おおきいつづら」という方だ。モノを増やしてアンシン、囲まれてアンシンの生涯を突き進めている。私が悪い。私は頭でわかって、そうはしない。

 気のせいかもしれない。
 一時期、心に不安のあるときがあって、ひとのマネをして通勤カバンをやめてリュックにした。まじないのように、あるいはゲンを担いだ。
 徐々に仕事関係の資料類を持ち歩くのをやめた。持ち歩かなくてもすむ仕事になったせいもあるが、お弁当におせんにグリコキャラメル、いくばくかの本が入っているだけである。家の鍵、充電コード(カメラと携帯)、小銭入れ、飛行機の座席からもらってきた吐き袋、あとはそんなもの。
 それで、心の平穏が保てるようになってきた、そんな気がしている。めざすは、晩年の母のリュックだ。タオルハンカチとちり紙、大きな鈴のついた部屋の鍵だけだった。かわいいリュック。

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