2010年6月4日金曜日

有馬温泉


 先祖の供養と墓を守らなければいけないという長男としての義務感があって、兄は母親が生きている時から、兄の住む地元に墓を移すこととその宗教的な作法にこだわっていた。来世観の違いはともかく、宗教的費用には何の根拠もない。そのことで大金を注ぎ込んでいるように聞こえてきたので、何度か話し合ったことがある。

 母の一周忌を迎える。縁もユカリもない墓地、供養の仕方にどうしてもなじめないのだが、それはそれ。兄も癌を患い、どこまでがどうなのかよくわからないが、つらい状態ではある。故人を偲び、生かされている我々遺族(と言っても兄弟だが)が集まって消息を確かめ合う、そのことが法事という庶民のつくりあげた仏教的な知恵だと思っている。だから、本当は生まれ育った山や川のある故郷に集まってやるのが、いちばんいいと思っている。その方がくつろげるし、母親や兄弟との思い出に浸れるし自らの癒しになる。ずっと、そのことを主張してきたが、日常に「墓を守る」という、私に言わせれば兄の「形式」に譲った形だ。「お墓とは何か」ということにもなる。

 ともかくもこの夏に、みんなでお墓に近いという神戸の奥座敷の温泉に宿をとることになった。

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