2010年7月20日火曜日

やはり


 故郷の川は九州では2番目に大きい。
 父の実家はもっと川の近くにあった。だから水には慣れ親しんだようで泳ぎは得意だった。我が地方の人々を「ガラッパ」と呼ぶ。河童のことだ、他郷の人は「足を引っ張る」という意味の悪口でも使う。
 私が育つころのこの川は工場の垂れ流し廃液で悪臭を放ち、色は常に赤茶けて澱んでいた。だから、泳ぐことはできなかった。釣りをするとかいうこともあまりできなかった。ミミズを餌にえび釣りはしたことがあるが、そんな川だったので食べることはなかった。
 
 三回忌は故郷(くに)でやろうよ、とは兄の方から言い出した。異存はない。
 やはり母を偲ぶには生まれ育った山と川が要る。

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