2010年7月10日土曜日

むかしむかし


 父は話し上手だった、場を盛り上げた、それでもてた、という話を聞くが、そういう父を知らない。むしろ、信じられない。病弱だったせいか神経質だったという印象しかない。

 『米原万里を語る』(井上ユリ、小森陽一編著 09年5月 かもがわ出版)を読んでいて思い出した。

 父も気まぐれに幼い私に昔話をしてくれた。それも、まともではない昔話。父のアレンジした話。今考えればパロディ化したもの。
「よかか、モモタローは鬼が島から帰ってどげんなったとか?」「知らんど」「よかか、・・・」
「ウラシマタローはじいさんになってどげんしたとか、知っとうか?」「知らん」「よかか、聞け・・・」そん次はどげんなっと?「こん次じゃ、もう寝れ」と言われたような気がする。寝つきのいい方ではなかった。父は私を寝かせねばならない事情があったのかな。
 中味は覚えていないが、「ほんのこっ?」(本当の事)と訊き返すような奇想天外、独創的な話だったように覚えている。文字通りお伽噺だった。

 いま、私の頭の中にはほとんど昔話がない。忘れてしまったのかあまり知らないのだろう。水木しげるさんも米原万里さんも‘ばあ’や父親から昔話を豊富に聞いて育ったようだ。口承伝承だ。私は父親を真似て少ししたことはあるが、基本的には「むかしむかし、あるところに・・・」と子ども達に語った記憶がない。テレビの「日本昔話」やアニメに任せてしまっていた気がする。

 これから少し、昔話を身につけてみたいなと考えている。

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