2011年7月19日火曜日

永い夏休み

 日程を人に譲り、ぐずぐずしていたら夏休みをとれなくなった。
 「第9回岩洞湖ライブのご案内」をいただき、今年は夫婦で参加する旨表明していた。ただ盛岡を往復するのももったいないと考えたので、地図をみてどこか近隣の温泉巡りでもしようと考えた。それで、9月の第2週を遅い夏休みとすることにしていた。

 ところが、いくら「藪川」とはいえ、“藪から棒”の異動だ。藪川にはなんの罪もないし、シャレにもならない。日頃話しかけもしない室長くんが、突然用事があるという。派遣店員よろしく、得意先の職場に1、2週間以内に着任せよとのことだ。得意先からは、我が社商品をほとんど扱っているのだから、一体化するとの美名のもとに、業務を丸投げされた。そのために、新年度から人を駐在させ「分室」とやらを設置した。本質は得意先の「人減らし」コスト削減が目的だ。3名が派遣され、案の定、向こうの職場では玉突きで異動になった人が1名、結果的に退職に追い込まれた。室長くんの職場ダイエット課題の役員への面接目標、面目躍如なのではないだろうか。ところがだ、なにも条件整備されないまま駐在させられた人たちと向こうの職場では齟齬が日常茶飯に起きる。それで一人が参ってしまったらしい、出勤拒否だ。その交代で行けという。なでしこジャパンがスウェーデンに快勝し、早朝の興奮も冷めやらぬ日の帰り間際のことだった。一日の気分が台無しになる。

 好きにしていいよ、今まで頑張ってきたのだから、なんとかなるよ。つれあいはそう言う。

 岩手県北および秋田にかけて、温泉があるようだ。「九州の男じゃけん」どこに何市があるかどんな温泉があるか、まったく土地勘がない。つれあいは東北出身なので、常識的な範囲で知っている、というか聞いたことがあるらしい。調べていけば、有名過ぎたり、田舎っぽかったり、湯治場としては歴史の積み重ねがあったり、高原の一軒宿だったり、それぞれ特徴があるようだ。それに、どうも北東北は主要な露天風呂が混浴であるらしい。それが…、とつれあいは躊躇する。秋田新幹線というから、何本もあるかと思っていたら驚いた、移動するのに何本もない。バス路線を調べる。荷物をもって列車やバスでのんびりと行ったものか、あるいは待ち時間のことも気にせずにレンタカーを借りてさっさと移動してその限りでのんびりとしたものか迷ってしまった。

 「決してあきらめない」きっと多くの人がこのことに心を動かしこれを学んだことだろう。俄かなでしこファンの私もそうだ。決勝戦の時間になんとか起きて観戦した。いよいよ日米決戦だ、などと大時代的についとらえてしまう。初戦を圧倒され1点を先制されてしまったあとに、一瞬うとうとしてしまう。だめかもしれない、これが頭によぎったからだ。延長戦の澤のあのシュート。同じく延長戦で見せたドイツ戦の丸山のあのシュート。積み重ねてきた底力に執念、つまり決してあきらめないそのものの神髄。何度も何回もこれらのシーンをニュースやワイドショウで見る。それで溜飲を下げる。私もシンプルな人間だから。その点ではついつい真珠湾攻撃に歓喜した当時の国民を少し連想してしまう(あぶない)。

 感動しながら、学びながら、私は対局にある。いつもあきらめてしまう。もはや、これまでと。

 決勝戦観戦そのあとのニュース、ワイドショウを一通り見終わったあと、二人でパソコンを開き、遅い夏休みの「北東北温泉巡り」の作戦を練る。せっかくだから、あそこも行きたいここも行きたい、で、どうやって行くのだ、温泉巡りどころか堂々巡りに陥る。あとで振り返れば、計画の段階が一番楽しいのだけれども。

 外は台風の影響で風が吹くようだ。台風のことを「へなちょこ」という長野さんが来るからだろうか。久しぶりにメールを開けてみて、また、驚いた。見落としていたのだけれども、藪川にも行くらしい。「いよいよ」かな、と二人で微笑む。前の日はうちに泊まったらいいのにとつれあいは言う。

 財布と体力との相談があるからたいして長くはない北東北旅行の夏休みを企てた。もはや、冬休みとも境目のない夏休みにすることにしたのだけれども。

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